前十字靭帯(ACL)損傷
主にスポーツをしている人にこの損傷はよく起こる。
特にサッカーやバスケットボール、スキー等の急激な方向転換を伴うスポーツや(非接触型:ノンコンタクト)、ラグビーやアメリカンフットボール、格闘技など、コンタクトの多いスポーツ(接触型:コンタクト)において、自分の意思とは違った方向に関節が強制的に持っていかれたり、地面に着地した際に、体重で大きく曲がってしまったときに起こる。
受傷時にはたいてい、体内で「ブチッ」と音がし、そのときには多少の困難さは有るが歩行は可能なことが多い。
受傷後の翌日には、膝に多くの血液が溜まっていることが多く、こうなると歩行は困難となる。
また、膝部位にある前十字靭帯は単独での損傷は少なく、たいていは他の組織(半月板、内側側副靭帯など)の損傷を伴うことが多い。
男性よりも女性に好発することが報告されているが、その頻度は2倍~8倍と報告によってまちまちである。
また、女性に好発する要因ははっきりしていない。
前十字靭帯は血液の流れが非常に悪い部分なので自然治癒することはほとんどないが、損傷・断裂した場合でも、膝周りの筋肉を鍛えることで日常生活やレクリエーション程度のスポーツであれば問題なくこなすことができる(保存療法)。
しかし、競技レベルでのスポーツに復帰するためには、手術によって再建するしか治す方法はない。
しかし近年の医術向上により、前述の保存療法でも競技レベルのスポーツへ復帰できる場合もある。
その際は、膝に専用のサポーターを装着して膝くずれしない様に保護するのが大半である。
手術療法
- 入院期間は3日(~最大5日)
- 基本的に翌日より荷重可能ですが、痛みや筋出力低下などが出現するため、ほとんどの場合は松葉杖での歩行となります。
- 前十字靱帯の場合は、再建した靭帯(スジ)が安定するまで時間がかかるため、膝の状態に応じたトレーニングメニューをその都度、理学療法士がお伝えします。
- 退院後は、週1~2回程度の外来リハビリ。膝の屈伸角度の改善、筋力増強、各動作での膝の使い方・姿勢、スポーツ動作など総合的にアプローチする。
- ランニング開始までに約2~3ヶ月、部分的な練習復帰に4~6ヶ月、完全復帰に6~8ヶ月程度
手術後・退院後のリハビリテーション
1.術後早期(3~5日で退院)
アイシング、関節角度の改善(写真左)、セッティング、荷重練習(写真右)など
2.1ヶ月(正常歩行獲得)
荷重がかかっているか理学療法士が チェックを行いながら、筋の収縮を促し、スクワットの形を作っていきます。
バランス運動、スクワットなど 最初は壁を利用して
3.2ヶ月(ランジ開始)
サイド・フォワードランジ(スクワット)など
スクワット動作理学療法士の指導の元、膝に負担のかかりにくいやり方を指導します
4.3ヶ月(ランニング開始)
サイドステップ、ランジレベルアップ
理学療法士の指導の元靭帯へのストレスを考慮し、運動の負荷を上げて行きます。
5.4ヶ月~5ヶ月(ダッシュなど)
捻るようなツイスト、片脚でのコントロールエクササイズ
6.5ヶ月(ジャンプ、危険性のない練習参加)
7.5ヶ月~6ヶ月(簡単な対人や練習へ参加)
8.6ヶ月~(試合復帰)
不足している項目のレベルアップ
ACL禁忌・注意事項
- ノンコンタクト(非接触型)による損傷は反対側も断裂するリスクが高い
- 靭帯強度の回復過程(手術後2~3ヶ月まで靭帯は弱まります)を理解してもらい、退院後も指導通り、移植靭帯に過負荷とならないよう注意する
- 競技特性を知り、競技に必要な動作や危険な動作を理解する